AOTSジャーナル14号(2019春号) 和文
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3No. 14 SPRING 2019月一度開かれ、これまでに300人近い卒業生を輩出してきました。5年間で300人という数字は多いのか、少ないのかわかりませんが、この専門家派遣が「礎」となって今があるわけで、今後、タイでさらに多くのSIer(ロボットシステムインテグレーター)が育っていくことを期待しています。 タイの産業や社会にどのように貢献できたとお考えですか?タイ政府は今後5年間で2千億バーツを投じるロボット産業振興計画を承認し、「タイランド4.0」政策にあわせてロボット産業と関連産業の振興を目指しています。工業省は、ロボットや自動化システムを導入し、生産性向上を目指す中小企業向けの低利融資や、現在200社あるSIer企業を今後5年間で1,400社に増やす目標を掲げています。タイも少子化で生産年齢人口も減ってくると言われています。人件費もまたまだ日本よりは安いとは言え、年々上昇しています。よってロボットによって自動化・効率化を進めていかないといけない。私どもがTGIと設立したロボットアカデミーは、タイ政府の政策よりも一足先のものであり、今後、労働集約産業から高技術、高付加価値産業を目指していくタイ産業界にとって、役立つ人材育成に関する協力ができたと思っています。 今回の取り組みを今後どのように生かしていきたいですか?日本のGDPは世界で3位ですが、生産性は27位です。しかも今後は人口減少に伴い労働生産人口も当然のように減っていきます。ある程度経済力を維持していくためには、生産性の向上、効率化を進めていくしかなく、ロボットの活用が急務になっています。実は、昨年の7月「FA・ロボットシステムインテグレーター協会」を立上げ、会長に就任しました。「SIerを中心としたFA・ロボット業界のネットワークの構築」「システムインテグレーションに対する専門性の高度化の推進」を行う団体です。現在加盟の171社のうち約半数以上は従業員50名程度の中堅・中小企業です。産業用ロボットのマーケットはほぼ1兆円規模に達しており、周辺機器やシステムも加えるとその3~10倍、最大で10兆円の規模をこのSIerが担うことになりますが、圧倒的に人数が不足しています。これまでに国が主導した短期のインテグレーター養成は行われていますが、本協会でSIerの統一エンジニアリングスキル標準や育成プログラムの整備を行なっていきたいと思っています。政府は「ロボットを中核として第4次産業革命をリードする」と言っていますが、これには4つのキーワードがあると思います。IoT、ビックデータ、AI、それとロボットセンサー。人材確保という面では、データ解析者、ソフトウェア技術者など多種多様な人材を育成していき、日本やタイ社会に貢献していきたいと思っています。タイに行ったときに日本ではこんな団体を作ったと自慢をしようと思ったら、タイでは1年前に同じような団体が設立されていたのです。タイとも切磋琢磨しながらやっていきたいので、今後ともよろしくお願いします。* TGI:タイ・ドイツ政府が設立した職業訓練センター。現在はドイツによる支援はなくタイ工業省の予算により産業界への支援を行っている。タイの産業振興策「タイランド4.0」ではロボットや自動化による生産性の向上やロボット産業そのものの育成を掲げており、本案件が先鞭をつけたシステムインテグレーターの育成はタイの現在の政策に引き継がれています。AOTSでは2018年度にTGI*を含む産官学カウンターパートともに、タイ国内におけるリーンオートメーションシステムインテグレーターの育成を行う事業を行っています。(日本企業のビジネス環境整備などのために日本の経済発展を支える制度、システム等を移転する「技術協力活用型・新興国市場開拓事業(制度・事業環境整備」(経済産業省委託事業))2013年、専門家派遣当時の写真、左は佐藤指導員、右はプログラミングで動いているロボット「高校生や大学生の時からSIerという職業がイメージできるようになってほしい」と語る久保田社長

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