AOTSジャーナル13号(2018秋号) 和文
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9No. 13 AUTUMN 2018白木教授には「進出して最初のオペレーションを開始するとき最も重要なHRM上の課題は、コアとなる人材をどのようにキープするか」「採用力を上げて定着率を向上させる基本中の基本は、競争力ある労働条件」といったお話の中で、次のようなポイントも紹介いただきました。Hoang氏からはベトナムの労働力の「強み」として、労働者が若く活動的で技術を吸収、応用する能力が十分に備わっていることや人件費の安さがある一方で、企業が知っておくべき「弱み」について、次のように述べられました。日本企業がグローバル化を進める中、ベトナムは投資対象国として、ますます重要な地位を占めるようになってきています。その一方で、ベトナムをとりまく環境や内政も刻一刻と変化しており、日本企業は今まで以上に、同国で優秀な人材を確保・育成し、円滑な労使関係のもと、利益を上げていくことが求められています。2018年3月に開催した国際シンポジウムでは、経験豊富な講師・パネリストをお迎えし、ベトナムで操業中及び今後進出を考える日本企業にとって、現地における円滑な操業のために必要な人的側面(現地人材の育成・活用、労使コミュニケーション等)についてお話いただきました。登壇者 白木 三秀氏(早稲田大学 政治経済学術院 教授)<第一部基調講演及び第二部モデレーター> Hoang Van Anh氏 (ベトナム商工会議所(VCCI)会員登録・研修部門 事務局次長)<第一部基調講演及び第二部パネリスト> 市川 太郎氏(インディビジュアルシステムズ(株)取締役)<以下、第二部パネリスト> 小林 恵介氏(日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部アジア大洋州課 課長代理) 齋藤 修平氏((株)グリーンハウス グループ執行役員)第一部 基調講演 「ベトナムの労働事情と労使関係の特徴」(白木教授) 「ベトナムの労働事情と労使関係の特徴」(Hoang氏)第二部 パネルディスカッション 「日系企業が抱える労使関係・人材育成の課題」をテーマに、白木教授をモデレーターとし、Hoang氏に加え、メコン地域経済の専門家である日本貿易振興機構の小林氏、ならびに既にベトナムへの進出を果たしている企業2社の幹部(市川氏、齋藤氏)をパネリストとしてお迎えしました。当日のお話を少しだけご紹介します。詳しくはぜひウェブサイトをご覧ください。(第一部の基調講演、第二部のディスカッションの記録がございます) ∠ https://www.aots.jp/jp/project/eocp/171220/report.html国際シンポジウム「ベトナム労働事情シンポジウム~日系企業が抱える労使関係・人材育成の課題~」 より白木教授Hoang Van Anh氏事業紹介本シンポジウムはAOTSが厚生労働省からの委託を受けて実施している海外の使用者団体や企業の人事担当者を対象に、日本の労使関係や人的資源管理に関する研修事業の一環として行いました。事業についてはAOTSウェブサイトをご覧ください。∠ https://www.aots.jp/jp/project/eocp/index.html「ベトナムでは労働条件、労働環境を考える際、家族ぐるみで巻き込むことがとても重要。ベトナムで従業員を定着させるためには運動会や社員旅行など家族を巻き込んだイベントを行うと、とてもインパクトがあるようです。たとえば従業員本人が「会社を辞めたい」と言ったときに、周りの親類縁者が、『何言ってるんだ。お前、あんないい会社辞めてどうするんだ』と、定着を間接的にサポートしてくれる社会があるようです。(基調講演より)」「ベトナムの教育訓練は工業化、近代化、また国際経済活動参入という環境の変化に対応できておらず、その育成ニーズに応えることができていないため、労働人材の質が高くありません。人材の確保、管理、待遇に関する制度もまだ十分に整備されておらず、競争力が欠けています。(基調講演より)」「外資企業が今後ベトナムの市場に参入し雇用を行う場合、人材は不足してきます。企業が教育を負担する必要が出てきます。(ディスカッションより)」
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