AOTSジャーナル12号(2018年春)和文
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7No. 12 SPRING 2018した)による成果報告会では、輝くような笑顔で堂々と日本での成果を発表する姿がとても印象に残りました。駆けつけたタマサート大学の教養学部長らも学生の発表内容に満足そうでした。学生が卒業するのは2018年6月になりますが、「学生が卒業した後に吉野家に就職してもらえればありがたいが、たとえそうならなくとも、タイであるいはアジアで活躍してもらえればそれでよいと思っている」と同社ご担当からはうかがっています。日本では牛丼の吉野家として知名度が高い同社ですが、日本の外食産業がタイであるいはアジアで海外展開を進める中で、今回の寄付講座事業によりタイの大学生が同社をはじめ日本の外食産業界に対する理解を深め、就職意欲の促進につながることを期待しています。ダルマプルサダ大学の寄付講座については、HIDAジャーナル9号(2016年秋号)「日・ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)事業のご紹介」で講座が開始されたことをお知らせしましたが、その後、機材の購入と活用、日本から専門家の派遣による特別セミナーの実施などカリキュラムが進展していますので、今号では、最新の進捗状況を報告いたします。ジャカルタ市内の東に位置する同大学は、そのすぐ先には、ブカシ市が続き、日本の商社が開発した一大工業団地が連なります。自動車や電機など日本の代表的なメーカーから部品製造工場までが集積し、アセアンにおける最も重要な日系企業の集積地のひとつとなっています。こうした日系企業が会員となった現地の商工会を「ジャカルタジャパンクラブ(JJC)」と称していますが、同大学での寄付講座は、JJCの協力を得て、現地日系企業の人材ニーズを踏まえ、カリキュラムを企画実施しています。中でも、JJCの主要会員企業のひとつであるインドネシア・トヨタ社(PT Toyota Motor Manufacturing Indonesia)の協力を得て、同社治具・金型製造部門のロザック部長に主任講師として協力いただき、具体的なカリキュラムの設定や講義内容のレベル合わせ、大学の教授陣の指導まで、AOTS事務局と細かなすり合わせをしながら講座を進めています。ロザック部長はAOTS帰国研修生でもあり、事務局の意図を的確に理解し、現地側を指導してくださいます。同大学の寄付講座の最大の特徴は、工学部産業工学科の既存のカリキュラムに追加する形で新規のカリキュラムを設定したことです。大学の長期休暇中に寄付講座を実施するケースが多い中で、同大学の寄付講座は、学期中に通常の授業として行われます。講師陣は大学の教授ら、学生は産業工学科の1年生30名全員を対象として始まりました。現在の対象は、1年生と2年生合わせて60名です。なお、今年は昨年に比べ、産業工学科の学生の応募が増え定員の2倍近い応募があったとのことです。同大学の授業はこれまで教科書重視でしたが、学生が日系企業で役立つスキルを身につけられるよう、精密測定器や治具などの機材を導入し、実践的なカリキュラムを徐々に増やしています。また、寄付講座は3年間のプロジェクトですが、プロジェクト終了後も大学が独自で継続・改善できるように、大学講師にもプロジェクトに参画してもらい、シラバスや教材の作成、評価基準の見直し、機材の管理方法など、一つ一つ整備を進めています。こうした実践力を高めるためのカリキュラムの工夫や、大学独自で改善できる体系作りなど、大学の運営幹部や講師陣と議論を重ねる中で、少しずつ事務局の考え方に対する理解が深まってきたことが実感できます。こうした中、大学の外部から新たな知見の刺激を受け、より活性化を目指し、日本から講師を派遣し、自動化に関する特別セミナーを企画実施しました。特別セミナー第一回(10月下旬)は、「自動化概論」と題し、大同大学名誉教授の西堀賢司先生に自動化の考え方やトヨタ生産方式を中心とした日本の管理手法について講義いただきました。産業工学科の学生を中心に100名近い学生が参加し、日本企業が当たり前のように取り組んでいる自動化や改善事例にやや驚きながらも理解を深めました。第二回(12月初旬)は、「ロボットプログラミング演習」と題し、日本組込みシステム技術協会(JASA)のご協力のもと、同会主催のETロボコンで審査委員を務める久保秋真先生にお願いし、学生が実際にプログラミングを行い、レゴブロックを組み立てた走行体(簡易ロボット)を動かす演習を行いました。3名ずつチームを組み、講師の指示に従いプログラミングを行い、無事走行体が走り始めると学生たちから歓声があがります。楽しみながら実践的なプログラミングの力をつける演習は大変好評で、その目的は達せられました。ロボットプログラミング演習にて、マシンを動かして喜ぶ学生たち(中央右は久保秋真先生)ダルマプルサダ大学プロジェクトチーム(右から4番目、ロザック氏と工学部の担当講師)ダルマプルサダ大学 寄付講座インドネシア

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