AOTSジャーナル12号(2018年春)和文
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3No. 12 SPRING 2018らった女性の父親が現在の現地法人役員のオスワル氏です。オスワル氏は、大手日系企業のインド事業立上げに関わったこともあり、日本人のよい面・悪い面もよくよくご存知でした。インド商工省で日本企業の窓口「ジャパン・プラス」ご担当だった豊福健一朗氏(「モディ現インド首相に一番近い日本人」と言われている)をして、「これまでの7年間の滞在中に出会ったインド人の中で最も信頼できる方」と言わしめた人物です。オスワル氏とは出会ってすぐに気脈が通じ、その日のうちに「日本企業としてインドの発展のために貢献することができる我々のビジネスに協力して欲しい」と頼みました。資金運用面から2013年4月の法人登記、2014年の工場用地確保、人材採用までオスワル氏の強力なサポートの下、トントン拍子で進みました。2015年に工場建設を開始し、当社創業のぴったり50年後である2016年1月25日、当社現地法人TOYOTA FORMS INDIA PVT. LTD.の竣工式を執り行うことができました。現在もオスワル氏は役員として私と共にインド事業を牽引してくれており、当社とは強い信頼関係で結ばれています。 AOTS制度を利用しての人材育成はいかがでしょうか。AOTS制度については元々ジェトロの専門官から紹介いただいたと記憶しています。現地法人で製造も営業もでき、将来の幹部候補になる人材を育てるべく、2014年に現地で新規採用したうち4名が約6か月、1名が約1年間のAOTS受入研修制度の技術研修(一般研修13週間コース(J13W)含む)に参加しました。このうち新卒の3名は、日本に研修に行くことが決まると、大学で非常に珍しく恵まれたケースとして全学生の前で紹介されたそうです。まったく日本語が話せなかった研修生が、J13Wに参加したことで、想定を大幅に上回るほどの日本語が話せるようになっており、円滑に実地研修に進めました。実地研修では技術的な専門用語が多くお互い苦労する部分もありましたが、研修生にとっては、実際に機械や製品に触れるよい機会となりました。研修生はとても熱心で、何でも吸収しようという意欲が見られました。将来の現地子会社の中心的な役割を担う人材を育成するという意味では、会社にとっても本人たちにとっても意義深いものとなりました。帰国後も一人も離職せずに勤務を継続しています。2017年度に入り、今度は日本で技術研修の指導を行っていたベテラン技術者3名をAOTS専門家派遣制度を使って現地法人へ派遣しました。型枠は用途に応じて形状、寸法等が多岐にわたっているため、各製品ニーズに応じた機械加工と溶接組立を行う必要があるのですが、現地技術者ではまだ型枠製造の技術や知識が不足しているためです。専門家派遣では低炭素技術輸出促進人材育成支援事業*を利用することになりました。型枠の溶接加工と組立加工の部門で作業効率を向上させ、作業時間を削減することにより、機械設備の電力消費量削減という省エネ目標の達成と、効率的な生産体制の確立を目指しています。この二つの制度を利用して人材育成は本当に捗っており、現地法人からも「現地人材の勤務態度が変わった」「専門家の指導や日本的なものづくりの考え方が浸透しやすくなった」との声があがっています。*低炭素技術輸出促進人材育成支援事業について エネルギーインフラ等の運営管理人材や、海外工場の生産プロセスの省エネ化に資する人材の育成支援を通じて、CO2排出や、我が国企業の海外市場開拓に資することを目的としています。当事業は、開発途上国だけでなく、欧米・中東諸国も含む世界各国・地域が対象になります。 社長の目指される「心」を育てる人材育成について 教えてください。インド進出にあたり、決断には勇気が必要でした。でも、今自分が思考することが未来を創造していることに気づいてから、経営についての不安感も迷いもほぼ消滅しました。今は過去の自分の思考で形成され、未来も同じように今思考しイメージしていることが具現化します。将来に不安を抱き心配することは、その心配を自分に引き寄せて現実化させることだと気づき、自分の立ち位置がわかり、「今」に注力する大切さを知って、経営判断につきまとう不安が軽減されました。現地法人社屋前にて
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