HIDAジャーナル10号(和文)
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HIDA JOURNAL8品質経営研修コース(Program for Quality Management、 以下PQM)は、質の高い日本の工業製品とその背景にある日本的経営に対する関心の高まりをうけ、中級・上級管理者を対象として1982年度に開設されました。第一回目のPQMは新しく完成したばかりの北千住の東京研修センターで3週間にわたって実施されました。PQMでは初回から現在に至るまで狩野先生にご講義をいただいています。また、TQMコンサルタントとして国内外で活躍されている安藤之裕先生*1は1983年にUNQC(品質改善コース、6-7ページで紹介)でご指導いただいたことが縁で、PQMでもコース当初よりご講義いただいています。狩野先生には1993年度から、安藤先生には1997年度からコースディレクターとしてコース全体の企画、監修にも携わっていただいています。PQMは2016年度で32回目を迎え、HIDAで実施している研修の中で最も長く続く研修のうちの一つです。PQMは現在2週間という期間で実施しており、総合的品質管理(TQM)を実践、推進できる能力の向上を目的として、TQMの原理原則や手法、日常管理、方針管理、QCサークル活動といったTQMを組織的に運営するための道具(TQM Vehicles)、品質保証、TQM推進における管理者のリーダーシップなどについて学びます。PQMの特徴として挙げられるのが企業見学とグループ討論で、双方とも初回から現在までPQMの重要な要素として受け継がれています。研修参加者は、来日前に自社の課題を洗い出し、PQMに臨みます。講義を通して知識を得た後、企業訪問で学んだ知識が実際に応用されている現場を見学し、また企業の担当者から話を聞くことで自社にどう活用するかを学びます。このように企業見学は理論を実践につなげる重要な機会であり、PQMでは、コマツ((株)小松製作所)、中部セキスイハイム工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社メイドー*2といった名だたる企業の全面的な協力を得て学習させていただいています。もう一つの特徴はグループ討論です。夕方にグループ討論の時間を設け、講師の方々によるきめ細かなコンサルテーションの下、自社の現状と照らし合わせながら、参加者は講義、見学で学んだことをどのように自社に適用し課題を解決できるか検討し、最終日に帰国後の具体的な行動計画について発表を行います。PQMを受講した参加者は皆、帰国後にそれぞれの組織で学んだことを活かし活躍されています。その輝かしい成果の一つとして参加者が所属する組織がデミング賞*3を受賞したという嬉しいニュースが寄せられることもあります(表1)。TQMを導入、推進していくためには、経営の中枢を担う経営者、経営幹部から現場の管理、監督者まで全社的にそれぞれの役割を果たす必要があります。そこで、狩野先生、安藤先生に監修いただき、東京で実施している品質経営を学ぶコースを階層別に再編成しました。現在は経営者・経営幹部向け(経営幹部のための品質経営研修コース、EPQM)、中級・上級管理者向け(品質経営研修コース、PQM)、現場の管理・監督者向け(品質問題解決演習コース、PQPS)の3つを開設しています(図2)。経営トップを対象としたEPQMではグループワークも含め狩野先生から直接ご指導をいただけるところが大きな特徴となっています。一方、現場の管理・監督者向けに設置したPQPSでは、演習を多く取り入れ、問題解決に必要な手法を徹底的に習得することができるように工夫されています。このように各階層に応じた研修に参加することで、TQMの導入、推進においてそれぞれの役割に必要な知識を得ることができます。*1 TQMコンサルタントとして、製造業からサービス産業まで広範な業種にわたりコンサルテーションを行っている。国内外の多数の企業において活躍されており、うち28社がデミング賞を受賞している。*2 五十音順。直近5年間で毎年継続してPQMで見学を受け入れていただいた企業。これまでそのほか多数の企業にご協力いただいている。*3 TQMが効果的に実施されている組織に授与される。デミング賞にはそのほかTQMの研究に関し、優れた業績のあった個人に授与するデミング賞本賞、主に海外でTQMの普及・推進活動に業績のあった個人に授与するデミング賞普及・推進功労賞、デミング賞受賞企業でそのレベルを3年以上にわたり維持・向上してきた組織を対象に授与するデミング賞大賞がある。 PQMコースディレクターを務められる狩野紀昭先生は1997年にデミング賞本賞を受賞。 品質経営研修コース紹介東京理科大学名誉教授の狩野紀昭先生(6-7ページで紹介)がコースディレクターを務められる品質経営研修コースについて紹介します。品質経営研修コースの特徴東南アジア南アジア東・中央アジア中南米中東アフリカ欧州224人 33%219人 32%15人 2%106人 15%25人 4%60人9%37人 5%計50カ国、686名図1 PQM地域別参加者人数(1982年度~2016年度)表1 デミング賞受賞企業一覧デミング賞受賞企業(国名、受賞年度)PQMコース参加年度リライアンス・インダストリーズ株式会社ハジラ事業所(インド、2007年度)2004年度、2005年度SCGロジスティクスマネジメント株式会社(タイ、2013年度)2012年度ASHOKレイランドLtd.(インド、2016年度)2012年度

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