HIDAジャーナル9号(和文)

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9No. 9 AUTUMN 2016プを埋める制度を整えるには10年近くかかるのではないでしょうか。そのため、実情に応じて短期間で即戦力を身につけられるような訓練を民間独自で行う必要性があり、そこにHIDAの研修事業に大きな役割と期待があると感じています。 職業訓練に関して、制度面でまだまだ多くの課題があると感じましたが、たとえば企業で働くということに関連して課題となるようなミャンマーに特徴的な考え方や慣習はあるでしょうか。ミャンマーの人々の考え方の大きな特徴として、ミャンマーが徹底して上意下達の世界であることが挙げられます。自分より年配または地位の高い人の言うことを聞くことが身に染みています。たとえば学校では、小学校から大学まで先生がテキストを読んで生徒がそれを復唱する、テキストを隅から隅まで暗記するというのが勉強です。基本的に先生が言ったことを覚えるのみで自分で考えるという教育ではありません。ミャンマーから日本の大学院に留学した学生に日本で苦労したことを聞いたところ、常に自分の意見を求められたことが一番日本の大学院で苦労したことであると答えた学生がいました。このように自分で考えて意見を言う習慣が身についていないので、就職しても現場で自分から発案して改善を行ったりといったことには慣れていないと思われます。しかし実際には企業で上司から言われることだけをこなしていたら仕事はできません。ミャンマー人は基本的にまじめで基礎能力もありますから、上司に対しても自分の意見を言っても良いのだと言うことを理解させ、自分で考え工夫して意見を言うという習慣をまず会社で訓練しなくてはならないでしょう。また、ミャンマーは独立以来内戦が絶えなかった結果、軍の存在が非常に大きいです。軍籍を離れた人が幹部として配属される国営企業や役所には軍隊の文化がそのまま持ち込まれます。そのため決断は早いですが、その時々で判断が変わることも多いです。職場のみんなで一緒に清掃したり一致団結したりという雰囲気はなく、いわゆるチームワークの文化はあまりないといえるかもしれません。 ミャンマーに特徴的な考え方やその背景にある事情が良くわかりました。これからミャンマーでは工業化が進展し、これまでとは異なる産業構造で働くことになるでしょうが、ミャンマーのキャリアに対する意識というのはどのようなものでしょうか。ミャンマーは日本以上の学歴社会です。冒頭で高校卒業時の試験が同時に大学入学資格試験であることをお伝えしました。この試験は600点満点なのですが、ここで取得した点数が一生ついて回ります。点数順に進学先の大学が振り分けられ、点数で大学卒業後に就職する役所での職位も決まります。そのため、これまで卒業試験で良い点数を取ることがミャンマーの人にとって目指すべきキャリアパスでした。ただこれから事情が変わり、たとえば卒業試験でうまくいかず大学に進学できなくとも、日本の企業に就職して研修を受け、幹部候補生として成功しているといったロールモデルが出てくれば、大学を出るだけが人生ではないと考える人が増えて状況は変わってくるでしょう。今後ミャンマーで十分な教育を受け、また自分の意見を述べることのできる人材が育ち、そうした人々に企業の幹部として大いに活躍してほしいと願っています。大変貴重なお話をありがとうございました。ミャンマーの教育制度や職業教育の現状を具体的に知ることができました。また、ミャンマーで即戦力となる人材育成のためにHIDAが担うことのできる役割も多くあることを感じました。ミャンマーを対象にした研修としては、今年度は品質管理をテーマにした研修コースや、5S・カイゼンをテーマに個別指導とセミナーを組み合わせた企業への専門家派遣を実施しています。ミャンマーの人材育成にぜひHIDAの制度を大いに活用していただきたく思います。会場の様子今年度、ミャンマーを対象に実施した研修、専門家派遣事業の一部をご紹介します。■ 研修事業2016年9月5日（月）から9月16日（金）までの間、関西研修センターにおいて「ミャンマー品質管理研修コース」を実施しました。研修には製造業の管理者が参加し、品質経営を推進する能力の向上を目標に、講義・見学・グループワークを通して、日本で育ったTQM活動の枠組みや特徴・QC的問題解決法・品質改善活動について学びました。■ 専門家派遣事業日本的現場管理の一層の定着を図るため、ミャンマー商工会議所連盟（UMFCCI）会員企業を対象に専門家を派遣し、ヤンゴンとマンダレーでそれぞれ2日間の5S・現場改善活動のセミナーを実施しました。続けて同専門家が参加企業のうち2社の工場を訪問し、各企業の現場の状況に合わせた指導をそれぞれ5日間に亘り行いました。

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