HIDAジャーナル7号(和文)
9/20
No.7 AUTUMN 2015 7指導の中心は、製造ラインで使用する工作機械であるマシニングセンターの仕組みの理解と適正な運転方法の習得でした。マシニングセンターは複数の工具を自動的に交換できる数値制御工作機械で、プログラミングによりコンピューター制御されています。専門家を派遣する前は、現地エンジニアがプログラミングの内容や機械の構造をよく理解していませんでしたので、安全面を優先して、工具交換にかなり長い時間をかけるようプログラムを設定していました。一方、日本ではエンジニアがプログラミングの内容や機械の構造をよく理解しており、機械の動き方や起こりうるトラブルなどを事前に予想し、先回りした動きができるので、短時間で工具の交換を行う設定になっています。そこで、今回はプログラミングの内容や機械の構造についての理解を深めるための指導に注力するようにしました。その結果、工具交換に要する時間を短縮することにより、マシニング加工における製品1個当たりの生産時間を約10%削減することに成功しました。また、これにより設備稼働時間と使用する電力も約10%削減されて*、生産プロセスの省エネ化を実現することができました。* CO2換算で年間約659kgの削減に相当指導された技術は基本的な工作機械のオペレーションで、指導期間は1ヵ月程度でしたが、それで消費電力を約10%も削減できるほど、加工効率が向上したのですね。はい。実際の指導では、まずエンジニアに基本的なプログラムのサンプルを見せて専門家と一緒に読みながら内容を理解させ、その理解内容に基づいてエンジニアに一人でプログラムのセット、機械の操作、結果の確認といった一連の演習を、専門家がつきっきりで反復させましたので、比較的短時間で習得できたと思います。当初、低炭素技術輸出促進人材育成支援事業が「低炭素技術」のための制度と聞いたときは、当社のケースは当てはまらないのではないかと思いましたが、メーカーであれば常に追求しなければならない生産プロセスの合理化による省エネもこの制度の対象となっているので、多くのケースで利用可能なのではないかと思います。2回目の専門家派遣で指導された方は、受入研修制度を利用して、現在御社で実地研修中ですね。さらなる技術のレベルアップが目的でしょうか?そうですね。専門家の指導によりプログラミングの内容を見て理解できるレベルまでは達しましたが、次のステップとして自身でプログラミングができるようになる必要があります。研修ではプログラミングと機械の設備管理ができるようになるところまで進めたいと思っています。現地で指導した専門家が研修の指導にもあたっているので、お互い気心が知れた仲であり、研修は順調に進んでいます。2013年に現地で指導した私も研修を担当していますので、研修生は見知った人の中で不安なく過ごしているようです。今後の御社の現地人材育成としては、どのような方針をお持ちでしょうか?やはり経営の現地化ですね。現在現地法人にはワーカークラスを含めて9人の社員がおりますが、うち2名が日本人で、経営や高度な技術に関することは日本人がいないと回りません。日本人を駐在させるのは非常にコストがかかりますから、徐々に現地スタッフだけで回せるようにしたいのです。昨年研修した2名のうち1名は家庭の事情でやむを得ず退職してしまいましたが、日本で学んだことを後任のスタッフに伝え残してくれましたので、研修した成果は社内に継承されています。このスタッフもいずれHIDAの制度で研修させたいと考えています。また、技術研修を経験した社員には、近い将来HIDAの管理研修にも参加させて、幹部としての知識や管理技術を身に付けていってほしいと思っています。御社の海外進出事例は、鯖江を中心とした同業他社にも参考となるのではないでしょうか?眼鏡等精密金属部品メーカーの業界では海外に進出した事例はまだ少ないと思います。当社は進出してまだ日が浅いのですが、同業者には一定の関心を持っていただいていると感じています。現地法人にはこれまでいくつかの日本企業が見学に来られました。ベトナムの日系企業にも、当社について徐々に知っていただけるようになっています。当社の精密金属部品を製造するための切削技術を活用して、現在こうした日系企業に対しても取引を拡大できつつあります。御社が今後も日本の眼鏡業界を先導して海外事業を展開されていくことを切に祈念いたします。本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。プログラミングを指導中の野村専門家製造する精密金属加工品例低炭素技術輸出促進人材育成支援事業
元のページ