HIDAジャーナル7号(和文)
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No.7 AUTUMN 2015 9エチオピアでは具体的にどのような技術指導をされたのでしょうか? 5ヵ月弱という非常に短い期間でスタッフの縫製レベルを上げるにはどうすればいいかを考えました。過去の経験から言いますと、最も早く技術を身に付けさせる方法は、完成品を分解してバッグの構成プロセスを理解させたり、分解したものを再び縫い合わせて完成させたりするというものです。これを繰り返しやらせて良い点や悪い点を評価・指導しました。革は縫うと穴が開くため、縫い直しができませんし、特にエチオピアシープは柔らかく伸びるため、慎重かつ繊細な技術が不可欠です。また、商品の良し悪しは細部にどれだけ繊細な作りができるか、また気を遣えるかにかかっていますので、これらの点に重きを置いた指導を行いました。指導期間中にサンプル品を30個以上作り、ほぼ指示通りに作れるようになりました。エチオピアで作ったバッグが返品されるなどのクレームは絶対に避けなければなりません。不良品は当社の信用問題に関わりますので、サンプル品といっても細部までチェックし、妥協は許しませんでした。指導は、英語と多少のアムハラ語、日本からの写真入りの仕様書、あとは手取り足取りで指導しました。やらせてみて、良し悪しを教え、またやらせてみることが重要です。エチオピア人を指導するにあたり、どのようなことに気を付けられましたか?スタッフには常に自分から挨拶し、話しかけ、冗談を言って笑わせるなど、できるだけコミュニケーションを取るよう心掛けていました。また、上手くできたときには褒め、駄目なときにはどこが駄目かを説明し、駄目なまま仕上がった物に自分の納得がいくか聞きました。納得いくのならそのままでいいが、納得いかないのであればどうするかを自分で考えさせた結果、ほとんどの人が自らやり直すことを選択しました。また、どこの国の人もすべての人に当てはまるわけではありませんが、ポイントをこちらが理解して説明してあげられれば、現地の人は心を開いてくれます。私は韓国と中国の海外経験が長かったのですが、同じ感覚を持ちました。付加指導*は、どのようにされましたか?LIDI(Leather Industry Development Institute)というエチオピアの皮革産業振興のための職業訓練校で付加指導を行いました。先生方にはミシンに関しての設備投資のアドバイスやミシンのメンテナンス(針の不具合のなくし方、セッティングの仕方等)の指導をしたり、生徒たちにはミシン縫いのための練習用の型を作り直し、パスポートカバーなどの製品を作らせて、縫製の良し悪しのアドバイスをしたりしました。実は、ヒロキアディスの従業員はLIDIの学生70人を面接して選りすぐりの26名を採用しましたので、今回の付加指導はLIDIとヒロキアディスにとってWinWinとなりました。*専門家指導先企業への日本側出資比率が50%以上の場合に行う、指導先企業と取引関係等にある現地企業等への指導・助言最後に、今後のエチオピアでの事業について課題と抱負を教えてください。ヒロキアディスは、エチオピアが1995年の憲法改正により現体制になってからは日本初のエチオピア進出企業であり、現在現地で唯一の日系企業でもあります。また、エチオピア政府は革産業を主要産業、成長分野と位置付けていますが、革を加工した付加価値の高い商品は作れていないため、ヒロキアディスは現地政府から非常に期待されています。日本と中国で培ったエチオピアシープのハンドバッグや衣料品の製造技術をエチオピアに移植し、現地の課題である「高付加価値商品の輸出」を実現することで、雇用を増やすとともに若者の自立といったエチオピア社会への貢献をしていきたいと考えています。ヒロキアディスが成長していくための源泉は、まさに継続的な「人材の育成」です。HIDAの役割もますます重要になっていくと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。貴重なお話をどうもありがとうございました。LIDIでの付加指導(縫製のチェック)バッグ製造(革の裁断)の様子新興市場開拓人材育成支援事業
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