HIDAジャーナル7号(和文)
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8 HIDA JOURNAL株式会社ヒロキエチオピアシープに賭ける!まず、御社の概要について教えてください。当社は、皮革衣料・服飾・バッグ・財布・革小物等、オリジナルブランドのデザイン・製造・販売及び同商品の輸入・販売を行っています。中でも特徴的なのは、究極の素材と言われるエチオピアシープを使った衣料品やバッグです。エチオピアシープとは、エチオピアの高地で育った羊の皮で、薄く緻密で伸縮性がありながらも丈夫な特性があります。柔らかくしっとりしていて、吸い付くような感触であり、例えるなら赤ちゃんの頬のような手触りです。工場は中国の北京市とエチオピアのアディスアベバの2ヵ所にありますが、製造は効率最優先のライン生産とは真逆の一人一着責任縫製を実施しています。最初から最後まで創り上げることで仕事への愛情が湧き、喜びが生まれ、さらなる向上へとつながる。これこそ良いものづくりの原点であり、その環境こそが製品を一流へと導くという当社の考えに基づいたものです。なぜエチオピアへ進出されたのでしょうか?当社は早くからエチオピアシープの良さに惚れ込んでおり、2007年からはエチオピアのタンナリー(鞣なめし工場)と直接取引を開始しました。「この素材で衣料を作れば、世界中が驚くに違いない」という確信を抱いていましたが、一般的には手袋用とされるエチオピアシープを衣料用とするにはいくつもの常識の壁を越える必要があるため、新規で衣料用の仕事を引き受けてくれるタンナリーはありませんでした。そこで、当社の担当者をエチオピアに滞在させ、タンナリーの社長をはじめ、工場長から職人の方々に当社のものづくりへこだわりやエチオピアシープに賭ける思いを根気強く伝え続けた結果、最終的には共同での素材開発に成功するまでに至りました。当初はこの素材を北京の工場へ送り、裁断・縫製し完成品にして日本へ輸出していました。エチオピアに工場を作ったのは、エチオピアが「物を安く作れる国ではなく、良い物をもっと良くするために時間をかけられる国である」という考えからです。確かに中国に比べ人件費は安いのですが、当社は価格競争ではなく付加価値競争の世界で戦っているので、材料の原産国に工場を持つことはメリットが大きいのです。つまり、素材の品質管理も行いやすいし、より丁寧に縫製ができ、到底日本ではできない手間のかかる仕事もエチオピアなら可能であるということです。また、エチオピア人は温厚でおおらかな人が多く、治安も良いこと、そしてエチオピアの人々の手により「世界に誇るヒロキオリジナル」を世に送り出したいという考えがあり、ヒロキアディスを設立しました。今回の専門家派遣の概要について教えてください。エチオピアシープは最上級の素材であるものの、究極の薄さと柔らかさを持つためすべての工程において高度な技術を要します。これらの技術を現地スタッフに指導したいと考え、専門家派遣の制度を利用することになりました。ヒロキアディスにはハンドバッグ製造部門と衣料製造部門がありますが、今回は山村専門家を派遣して、ハンドバッグ製造部門のスタッフに対する基本マニュアルに沿った皮革バッグの縫製技術、裁断技術及び革漉すき技術に関する集中的な指導にあたってもらいました。専門家派遣制度の利用事例として、創業64年の歴史を誇り、革製品を専門に手掛ける株式会社ヒロキをご紹介します。株式会社ヒロキは世界最高峰と言われるエチオピアシープを使った製品で有名ですが、2014年にエチオピアに設立した縫製工場(Hiroki Addis Manufacturing S.C.、以下ヒロキアディス)での技術指導のため、2014年10月から2015年2月まで社員の方を専門家として派遣されました。そこで、エチオピア進出の経緯や現地での指導の成果について、代表取締役の権田様と派遣専門家の山村様にお話を伺いました。本  社 神奈川県横浜市中区元町2-89設  立 1960年資本金 4,000万円従業員数 30名(2015年4月現在)事業内容 皮革衣料・服飾・バッグ・財布・革小物等、オリジナルブランドのデザイン・製造・販売及び同商品の輸入・販売ヒロキアディス(4F)が入るビル制度活用事例―新興市場開拓人材育成支援事業―新興市場開拓人材育成支援事業

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