HIDAジャーナル5号(和文)
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HIDA JOURNAL4次に、専門家派遣の事例として、大阪市に本社を置く軽合金アルミ製造などを中心に手掛ける株式会社ナカキンをご紹介します。株式会社ナカキンは1995年4月にインドネシアのジャカルタにP.T.ナカキンインドネシアを100%出資で設立し、翌年4月に操業を開始しました。2000年から専門家派遣制度を何度か活用しており、最近では2014年3月から約3か月に亘り、アルミ鋳造部品の品質向上と現地管理者の人材育成を目的として専門家を派遣しました。今年の専門家派遣による指導の様子を中心にお話を伺いました。本  社 : 大阪府大阪市淀川区木川東3-4-18設  立 :1964年資本金 : 8,400万円従業員数 : 386名(2014年3月現在)事業内容 : 自動車用エンジン部品を中心に、開発・設計・金型・鋳造加工まで一貫生産。その他、食品・医薬品・ファインケミカル用サニタリーロータリーポンプ・充填機なども製造。専門家派遣で現地人材と本社社員の育成を図る株式会社ナカキン今回の専門家派遣の経緯を教えてください。P.T.ナカキンインドネシアでは、二輪・四輪用のアルミ鋳造部品を製造しています。これまで主にインドネシア国内の日系メーカーに納入していましたが、最近はアセアン域内でも相互供給が始まり、ベトナム向けの自動二輪用アルミ鋳造部品の生産を開始しました。しかし、ベトナムの品質基準はインドネシア国内向けのものより高く、外観不良、鋳造欠陥といった不良が多く出てしまい、ベトナム向けの鋳造部品について品質を向上させることが喫緊の課題となりました。この不良について品質向上を図ること、そして現地の管理者がセオリーに基づき自身で不良対策を立案できるように育てること、この2つを目的とし藤原専門家を派遣することにしました。藤原専門家は当社のアルミ鋳造の分野で10年近くの経験があり、またP.T.ナカキンインドネシアにも3年ほど駐在したことがあります。藤原専門家にお伺いします。今回の派遣目的の達成度合いや現地でのご指導について、特に管理者の育成という部分をもう少し詳しく教えてください。派遣されてからまず最初に鋳造条件や不良内容の調査、分析を行いました。また、現地の管理者(リーダー、サブリーダー、ラインキーパー)と意見交換をしましたが、その結果、これまでデータではなく勘を頼りに不良の対策をとっている状況であったことがわかりました。 セオリーに基づいた対策が必要という認識はあるものの知識不足で適用できていなかったようです。現地でも日報に不良の内容、部位や数のデータは記録していましたが、知識不足でデータの分析等ができていませんでした。そこで、次のような指導をしました。まず不良対策のセオリーとしてPDCAサイクル(計画・実行・確認・対策の順に実施し、常にこのサイクルを回すこと)を教えました。そして、特に確認の部分で、不良を確認するポイントを指導しました。ポイントというのは、この不良は金型の1番と2番で差異はないか、不良が発生している位置はどこかといったことです。仮に金型の1番では不良が発生していないのに2番では発生しているといった差異があれば2番の金型を1番の金型に近づける対策をとります。これまで現地の管理者たちは、1番と2番に差異がある、というデータは収集しているものの、そのデータを分析せず、勘に頼って1番と2番の両方に対策を実施している状況でした。これでは、いつまでも不良がなくなりません。また、対策を実行する前には、真因を追及する必要があります。そのためにナゼナゼ分析といったQC手法を指導しました。例えば、不良の発生原因の一つとして金型温度が低いことがあります。そのようなとき、これまで管理者は作業者に対して金型加熱の時間が少ないからと指導していたようです。しかし、実際にナゼナゼ分析で確認してみると加熱バーナーの加熱部位が少なく、そのため十分に金型を加熱できないことが分かりました。この分析の結果、加熱バーナー品質管理リーダーが品質限度や傷の測定方法について加工リーダーに指導

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