HIDAジャーナル5号(和文)
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HIDA JOURNAL18先生が力を入れて取り組まれてきたFBは、国内でも注目され始めています。日本のFBの特徴や可能性を教えてください。日本にはもともとFBが多く、日本経済を支えてきました。大阪は全国で2番目にFBの多い地域ですが、後継者不足に悩む企業が多いのも事実です。取材した多くの企業は厳しい現実の中、責任を持ち価値ある仕事をしているところばかりです。FBに対する固定観念やネガティブなイメージを、見せ方を変えることによってその価値を引き出したいと思っています。それらの企業が持つ技術やノウハウは一度なくなってしまったら二度と戻りません。日本のFB経営者は「絶対に企業を存続させるという強い意志」を持っています。第三者からの資本参加には慎重ですし、取引先についてもコストや効率よりも長期間にわたって蓄積してきた信頼関係を優先するなど、安定的に事業を継続していくための経営判断を重ねる傾向があります。また、長く続いている企業は常に「挑戦」しています。代替わりの際に自分たちの強みの棚卸しをして、その強みをベースに新しいことに挑戦しています。これを世代交代のタイミングで毎回行っています。家族のように社員を大切にし、人材を長い目で育てているのも特徴です。日本企業の人材育成については、タイファミリービジネスマネジメントコースの受講者が大変関心を持ってくださった部分です。このように長期的視点で存続にこだわった経営をするからこそ、創業当時からの精神や技術が受け継がれているのです。今、日本では、女性の活躍を推進する動きが盛んです。FBにおいて女性の活躍はいかがですか。私は実家が家業を営む学生を対象としたゼミを大学で開催しています。ゼミに参加する女性後継者は年々増えており、最近は過半数を超えています。そして、彼女たちはみな自身の家業を継ぎたいという明確な意思を持って参加しています。先ほどFBは代替わりのたびに新たなことに挑戦するとお話しましたが、そこに女性らしい新たな視点という強みを活かせるのではないかと考えています。家業の経営資源・強みに何かを掛け算することで新しいことが始まります。何を掛け合わせるかは社長のセンスなのです。男性だけだった業界で女性だからこそ気づく新しい何かを入れることができれば、面白い展開が期待できると感じます。またFBの場合、後を継いでから、古参の社員との関係が障壁になることが多いですが、女性の方が昔からいる社員に上手に可愛がられながら経営者として育っていけるかもしれません。そんなしなやかでたくましい女性経営者が今後生まれてくるのではないでしょうか。HIDAでは海外から日本に研修生を受け入れたり、或いは専門家を海外に派遣する制度を通して企業の海外進出を支援する仕組みがありますが、中小企業の海外進出や当協会の仕組みについて、どうお考えでしょうか。特に製造業では20~30人規模の小さな企業であっても海外進出を考えています。海外進出は大変関心の高いテーマです。ただ、生産拠点を持つ場合は投資が必要で、実現にこぎつけるのが難しいのも実情です。最近の潮流として感じるのは同業の仲間と一緒に海外進出するケースが多いということでしょうか。ある自動車部品の会社は近隣の企業と一緒にベトナムに進出しました。中小企業が単独で見知らぬ土地に社員を送り込むのは不安ですが、一緒に進出し現地での生活も共にすることで不安も減り、また社員を送り込む側も安心できるようです。多くの中小企業は海外拠点がないので入手できる情報が限られますが、ベトナムに進出したある企業は、ベトナム人研修生が現地とのパイプを作り多くの情報を入手できたそうです。その後この研修生を現地で雇用し、それがきっかけとなり海外進出につながった事例もあります。このように実際に人が行き来する事例をつくるのがグローバル化のスタートと感じており、HIDAはそうした場を提供できる機関です。お話を伺い、日本経済におけるFBの意義、そして日本が得意とする技術の継承や人材育成はFBに脈々と受け継がれていると感じました。今後については、事業を承継する女性経営者がどのような切り口で活躍するのか関心が高まります。また、中小企業のほとんどが海外進出を念頭においているとのことで、HIDAとして支援できる部分があることを感じました。このたびはインタビューをお受けいただき、ありがとうございました。タイファミリービジネスマネジメントコースで講演する山野チーフプロデューサー

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