HIDAジャーナル5号(和文)
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13No. 5 AUTUMN 2014学生がHIDAの研修に参加して日本の企業文化等を学んでいますし、また、派遣専門家によるTNI教員並びに学生への自動車分野の技術指導等も受けています。TPAを母体としてTNIを設立されたとのことですが、クリサダー学長のかかわりをお聞かせください。TPA創立メンバーは当初より「いつかは大学を作りたい」という目標がありました。しかし、当時タイには国立大学しかなく、政府は「民間に大学は任せられない、国が行うもの」という考えでした。その後、タイの発展に伴い国立大学だけでは必要な数の人材を供給できなくなるとのことで、民間にも大学設立の門戸が開かれました。大学設立計画が具体化したのは2004年頃で、現地のバンコク日本人商工会議所・JETRO・HIDA等日本関係機関の協力を得て開設準備に取り組みました。当時、在タイ日本産業界には「タイには製造現場に適した実践的なエンジニアが不足している」という声が多くあり、こうした日本産業界のニーズと、「タイ産業界のニーズに対応できる人材を供給しよう」というTPAの目的が合致したのです。とはいえ当時のTPAにとって、大学設立はTPAの存亡をかけた大きな決断でした。TNI設立後も学生募集等で苦労しましたし、TNIの経営はTPAの時より更に難しいものでしたが、志を同じくする仲間と一緒に取り組むことで成し遂げてこられました。TNIにおける教育の特長はどのようなものでしょうか?専攻とカリキュラム設計が挙げられます。「企業ニーズに応える人材・将来日本企業の中核となり得る人材の育成・輩出」という基本コンセプトの下、「専門力・語学力・組織力(組織に適応し、改善・改革する能力)」を主要要素と位置づけています。また、タイの産業の中で特に拡大を続けている「自動車・機械・情報」に関係する学部を設け、「経営管理」に関しては他大学と異なり「生産管理」を重視し、各分野で企業実務に即使える科目に集中した設計になっています。次の特長として、全学生が必修となっている日本語教育があります。タイにおいてTNIほど日本語教育に力を入れている大学はないのではないかと思います。日本語でコミュニケーションを取ることで、日本人からの技術移転効果を大幅に高めることができます。バンコク日本人商工会議所等の協力を得て在タイ日本企業約400社でインターンシップも実施しています。日本企業と幅広く連携している当大学だからこそできるプログラムであり、TNIにとって産業界との更なる連携強化という大きな効果につながっています。学生時代から日本企業の技術に加え考え方も学ぶことができ、そのおかげで卒業後に日系企業に就職すると、すぐに学んだことを実践できます。TNI学長の立場から、HIDAの活動・事業についてどのように評価されていますか?これまでにHIDAが実施してきた人材育成事業は、TNI及びTNI卒業生を通じてタイ現地産業に技術移転という点で大きなインパクトを与えています。また、研修等への参加を通じて各国間のネットワーク・協力関係拡大にも大きく寄与していると感じています。私が委員として参加した2010年のHIDA業績評価委員会においてもこの点に言及しました。最近は、日本企業に就職したTNI卒業生が所属企業から派遣される形でHIDAの受入研修に参加する例も増えています。HIDAの研修制度を利用すれば、日本の文化や日本語等を理解した上で日本本社で実施する実地研修に臨むことができるので、企業にとっては現地の従業員を教育する上での障壁を大幅に減らすことができます。TNIとして今後、HIDAへどのような期待をされていますか? TNIは今後これまで以上にHIDAと密に協力・連携していきたいと考えています。具体的な共同事業のアイデアの一つとして、HIDAが長年に亘り培ってきた海外産業人材向け日本語教育のノウハウを活かし、例えば「HIDA版ビジネス日本語基準」を構築するのはどうでしょうか。TNI卒業生は日系企業就職者が多いので、TNIとの共同研究プロジェクトとして、より実効性の高い基準を作ることも可能になるでしょう。またHIDAがこれまで行ってきた受入研修の効果は大変高いものがあると理解していますが、コスト及び現地最適技術の移転の観点からは、日本以外の場所で現地のしかるべき機関と協力して行う「第三国型研修」も有効であり、タイではTNIがこの分野で色々お手伝いできることがあると思います。例えば近年経済開放・発展が続いているミャンマーやカンボジアといった国から管理者・技術者をタイに招聘しTNIを拠点として固有技術や管理手法の研修を行うことが考えられます。2015年にAEC(アセアン経済共同体)が始まると人の移動が自由化され、アジア各国からタイにやってくる人の数は現在より一層増えるでしょう。タイ人自身もメコン域内近隣国だけでなくインドネシアやフィリピンといった諸国へ出かけ、現地で仕事をする機会が大きく増えることが予想されます。また、自動車産業に代表されるように国際分業の傾向もいよいよ顕著になってきています。こうした環境変化の中、HIDAには是非、他国でも活躍できる国際人材の育成に力を入れてもらえることが望ましいと思います。このことはアセアン各国だけでなく日本にとってもメリットがあるはずです。各国の国際人材が増えれば、日本企業にとってもマーケットが広がり、生産拠点も多様化・最適化しやすくなるからです。今後、HIDAの事業・活動領域はいよいよ拡大していくと思います。一層のご発展をお祈りしています。本日はどうもありがとうございました。

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