HIDA JOURNAL 2014 SPRING No.4
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14 HIDA JOURNALりせず、現場に対する意識が弱くなっているのかもしれないですね。岩崎:デミング賞の審査で各国の現場をみると、データが見える化されていません。データをしっかり集め、データを加工して共有化できる工夫をもっとしなければならないはずですが、どちらかというとマネジメントに集中してしまっているように思います。つまり、データに基づく改善活動の積み重ねを継続する姿勢が弱くなっているとも言えます。その意味では、日本から現場のデータ収集と解析の重要性をもっと発信したほうが良いのかもしれません。QCTCコースの来日前の事前アンケートで、「7つ道具」、「新7つ道具」について知っているかどうかを聞くようにしています。多くの参加者は「知っている」と書いてきますが、実際に来日して実態をみると基本的なことを知らないという印象を受けます。武田:仕組みを学ぶにあたり統計的な手法を知らなくても何とかなってしまいますが、基本になるデータがないと何のために仕組み作りを行っているのかがわからなくなってしまいますね。岩崎:QCTCコースの現在のカリキュラムは方針管理、新商品開発、品質保証が中心になっていますが、事前アンケートで聞いているように7つ道具を使ってデータ解析をする方法を知っていることを前提に参加してもらっています。ただ、現実には、講師が期待するレベルのデータ解析方法の習熟レベルではないというのが事実です。武田:参加者自身が思う「知っている」というレベルと、来日して講師が参加者に求める「知っている」のレベルには差があるということですね。つまり、それはアジア諸国では品質管理は知識として広がっているけれども、まだまだ品質管理そのものは定着していないということでしょうか。岩崎:一部のすぐれた企業が日本的なTQMを実践していますが、底上げという点ではまだまだ充分ではないように思います。1998年にインドの企業がインドで初めてデミング賞を受賞しています。これは、台湾を除けばアジア地域では初めての受賞です。今から15年前のことであり、インドでのTQM活動についてはそれほど歴史が長いとは言えない状況だと思います。インドの企業はISO9000、マルコム・ボールドリッジ、シックスシグマやバランススコアカードについては非常に強い興味を持っており、それらへの取り組みには勢いがありますし、中小企業も積極的に導入しているようです。武田:確かにISO9000の取得企業数はインドの企業が多いです。ただ、ISO9000の取得は仕組みの構築だけで終わってしまっていて、そこに品質のデータを入れていくということは十分にはできていないケースも多いということも聞いています。ところで、QCTCコースのこれまでの研修参加者数は700人近くになり、それぞれの国で品質管理の向上に貢献してきていると思いますが、こうした研修事業を通じた人材育成の成果や効果をどのように感じられるでしょうか。岩崎:QCTCコースの影響力は非常に大きいと思います。特にHIDA-AOTS同窓会組織は他団体にはない特徴です。現地で帰国研修生たちがしっかりとした組織を作り、そのトップの人たちが理解を持って全体をまとめるとともに、HIDAとのつながりを強くしていくというリーダーシップをとっていると思います。このことは、同窓会が研修参加者を推薦することで優秀な人たちが研修に参加するという好循環を生んでいるようにも思います。また、講師側からすれば、研修参加者を苦労して集めなければならないということはなく、参加者が安定して確保できることはありがたいことです。また、そうした研修参加者らが「選ばれた」という強いプライドを持って研修に参加しているため、帰国後積極的に品質管理の普及活動をしていただけていると思います。武田:企業から参加している場合は帰国後に企業内で品質管日付午前午後8月28日(水)オリエンテーション/開講式講義:TQMの基本8月29日(木)講義:TQMの進め方とQC的ものの見方・考え方講義:QC的ものの見方・考え方8月30日(金)講義:日常管理・方針管理講義:方針の策定と展開 8月31日(土)休日9月1日(日)休日9月2日(月)講義:新製品開発講義:QFDによる要求品質展開の作成 9月3日(火)講義:品質保証の進め方講義:QC工程表の作成9月4日(水)見学:QCサークル活動の事例見学:方針管理の事例9月5日(木)講義:工程の管理と改善9月6日(金)講義:QCサークルによる人材育成講義:サークルの活性化策の作成9月7日(土)休日9月8日(日)休日9月9日(月)講義:生産システムの確立講義:生産システムの事例研究9月10日(火)講義:問題解決と継続的改善の体験学習(球Cゲーム)9月11日(水)講義:問題解決と継続的改善の体験学習(球Cゲーム)9月12日(木)講義:問題解決と継続的改善の体験学習発表会講義:総合質疑/修了式2013年度「品質管理研修コース」日程表 実施場所:関西研修センター

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