HIDA JOURNAL 2014 SPRING No.4
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No.4 SPRING 2014 13左:武田専務理事 右:岩崎名誉教授方、アメリカの品質管理はあまり良くない時代でした。なぜ日本の品質が良くて、アメリカの品質が良くないかといった番組がアメリカで放映(全米ネットワークNBCで「If Japan Can … Why Can’t We?」)された年が1980年であり、ここからアメリカの巻き返しが起こり始めました。また、1978年に国際会議である第4回ICQC(現ICQ)が日本で開催されました。日本が主導権を持って開催される国際会議がほとんどない中、第1回の開催が日本、その後、アメリカ、ヨーロッパを回り、日本が再び開催国となるため、9年に1度日本でこの会議を行います。国際会議で日本がリーダーシップを取るのは珍しいことであり、それだけ品質管理分野で日本の影響が大きいといえると思います。こうしたことを踏まえれば、このQCTCコースが日本の品質管理分野の勢いがあった時代、まさに1979年に立ち上がり、開始されことは、非常にタイミングが良かったといえます。6週間という長いコースにも関わらず参加者がたくさん集まり、今日まで長く続いたのかもしれません。参加者の国でトップ3にインドが入っているということですが、インドでは大手企業を中心にTQMへの取り組みが積極的に行われておりデミング賞の受賞企業も20社を超えています。武田:QCTCコース立ち上げ初期のころから長年にわたり海外からの研修生と直接接していただいている中で、研修生の品質管理への取り組みや問題意識は時代とともにどのように変わってきていると感じられますか。岩崎:この35年間に、QCTCコースのカリキュラムはいろいろ変遷してきています。最初のころは、統計的解析を中心にカリキュラムを編成していました。故安藤先生を中心に、「統計的な内容をしっかり教えよう」ということでカリキュラムを充実させていました。過去には細谷克也先生(品質管理総合研究所代表取締役所長)や二見良治先生(二見技術士事務所)らが中心に教えていました。参加国の品質管理への関心も統計解析に基づく製造品質の安定化から品質を中核とした経営、すなわちTQMへと変化してきており、日本の産業の発展の根幹にあるのは品質を第一とするマネジメントの実践にあると認識し、その活動の方法論を学びたいという要望が強くあります。武田:コース開設当初は研修期間が6週間でしたので、カリキュラムに統計的な手法を組み入れ、演習もしっかり組み込んだ内容でした。現在は研修期間が2週間と短くなっていますので、こうした統計的手法を習得するための演習を十分に取り入れることが厳しくなっているのでしょうね。岩崎:コース立ち上げのころは、日本をはじめ他の国々でも、「統計的な手法をしっかり修得し、現場の品質管理を行うこと」だったと思います。今でも統計的手法の活用は原点ですが、近年の品質管理はTQMなどマネジメントが主流になっています。とはいえ、データで語れるような企業の管理体制を作り上げていかないといけないと思いますし、品質管理の基本はそこにあると思います。品質管理に対する意識は日本が一番変わったと思いますが、研修生の皆さんの意識も随分変わってきています。どちらかというとデータを嫌い、TQMといったマネジメントに意識が向き、仕組みや考え方に非常に興味を示す傾向にあります。武田:現場のリーダーの方たちでも、その傾向はあるのでしょうか。岩崎:そうですね。日本の現場でもそうした傾向にあります。研修生の皆さんは、仕組みや体制をどのように構築すれば日本のように物が作れるようになるのかといったことに興味があります。現在のQCTCコースでもほとんどデータを扱いません。唯一QCゲームの演習で数値を集め、ヒストグラム、散布図、管理図などを実践的に作成し、その結果からの考察を演習として実施していますが、その他の講義や演習ではデータを扱わない品質管理の内容になっています。武田:QCTCコースが立ちあがったころは、研修生が事前に各社でデータを集めて来日し、講義中に他の研修生といろいろ議論していたようですが、今はそれがなくなってしまったのですね。岩崎:品質管理の基本は、「品質は工程で作る」というのが1950年代後半から今日まで続いている考え方です。一人ひとりがそれぞれの工程での役割を果たし、工程で品質をしっかり作りこむことがベースであり、その上に仕組みを整えることが次にあるべきだと思いますが、最近はそれが逆転している印象を受けます。特に、新興国では、データより仕組みに重きを置いているように思えます。武田:アジアの人たちも現場でデータを取ることなどをあま

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