HIDA JOURNAL 2014 SPRING No.4
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No.4 SPRING 2014 9ていくべきであることも付け加えました。EPCMコースの元研修生をはじめ講演会場の方たちの印象はいかがでしたか。参加者の皆さんは日本のことを良くご存じでした。日本の経済がアベノミクスによって良くなったと言われているが、何を基準に判断しているのかといった鋭い質問もありました。EPCMコースに参加したことで、「実務家でも常に勉強することが大切だ」ということ、またコースで学ぶ新しい知識はいずれ陳腐化していきますが、普遍的な「世の中の物の見方」についてしっかり理解するようになったと言う元研修生のお話を多く聞きました。ところで、EPCMコース30周年を機に、HIDA-EPCM クラブ結成のご発案を頂戴しました。このクラブへどのような期待を寄せられていますか。過去30年間にEPCMコースに参加された研修生は、54ヵ国/地域に800人以上います。こうした人たちをネットワークしていこうと思った理由は、2つあります。ひとつは、元研修生とのつながりが、日本人講師を中心にした言わば放射状のつながりであったのを、彼ら同士でつながり、世界中に網の目のような関係を構築していくことにより、本当の意味で彼らが力を発揮できるのではないかと考えたからです。二つ目は、EPCMコースの参加者は帰国すれば各企業でしかるべきポジションについており、産業界への影響力もある人たちです。そうした人たちがお互いに力を合わせて、自国や隣国の若い人たちを育てていってほしいと思っているからです。EPCMコースは毎年20名強しか参加できませんが、地域毎に集まって彼らなりの研修を実施したり、人脈を若い人に提供してあげたりするなど、彼らの人的ネットワークを有効に活用できると思います。こうしたネットワークメンバー間のコミュニケーションを活発にするためには、HIDAに事務局役を担って頂き、このEPCMクラブがHIDA-AOTS同窓会内の絆を更に強化するきっかけを作れればよいと期待しています。最後にHIDAの人材育成事業の意義などをお聞かせください。実際に社会で仕事をしている人たちを対象とした人材育成事業は、実学教育としての価値はもちろんですが、彼らの世界観を拡げる機会を提供するという重要な役割も担っていると思います。彼らは具体的な問題意識を持っており、仕事上の問題は国や宗教が異なっても共通点がたくさんあります。そして、同じ問題を全く異なる文化や教育背景を持つ人たちと一緒になって答えを出そうとするプロセスの中で、今まで見聞きしなかったような異なる見方に触れることになり、それが物の見方を広げまた柔らかくする訓練になります。そして、相容れないと思っていた人が、同じ問題を抱えていることに気がつくことで「違い」よりも「同質性」をより多く見出し、親近感を持てるようになります。それこそが世界平和の基盤だと私は思います。つまり、悪いことは悪い、良いことは良いと感じられることを教室の中で体験するうちに、自分を受け入れてくれる世界が広がり、気付かぬうちにそれまで持っていた偏見が削がれて行く筈です。こうしたプロセスの中で違いよりも同質性の多さを確認し合う人と人との結び付きの大切さを実感できるHIDAのような研修事業は、職員の皆様や我々講師も含む全員に一体感を持たせ、ひいては世界を一つにする結果につながります。研修生達は、HIDAの研修センターで職員の皆様の真摯な人間性にふれ、その結果彼等全員が「日本の人に親切にしてもらった」ことを身体中に染み込ませて帰国しています。来日した研修生の中に日本を悪く思う人は一人もいないはずです。HIDAの研修事業は決して押しつけではなく、職員の方々の参加者に対する人としての優しさを通して知日家、親日家を育てている訳で、これが真の平和の基礎になるのです。世界平和は政治家が作るのではありません。国籍、人種、宗教、文化、教育等々多くの異なる背景を持つ人達一人一人が、異質性よりも人としての同質性の多さに気付いた時に真の平和が訪れるのです。そんなきっかけを提供し続けるのが人材育成事業の本質的価値であることを多くの人たちに理解してもらい、人材育成事業は今後益々その規模を拡充していってほしいと思います。――本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。*インド・ニューデリー事務所は活動開始の準備中です。(2014年1月31日現在)会場の様子

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