HIDAジャーナル 2013 SPRING
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HIDAジャーナル No. 2 ● SPRING 20138 次にご紹介するのは、P. T. NARUMI INDONESIAです。同社は、日本で初めてボーンチャイナの量産化に成功した鳴海製陶株式会社(本社:名古屋市緑区)の海外生産拠点です。1980年代後半から急激に進んだ円高への対策として、1995年に設立されました。インドネシアの首都・ジャカルタ近郊のイーストジャカルタ・インダストリアルパーク内にあり、ボーンチャイナの高級洋食器を製造しています。 鳴海グループは、食器のかたち・色などに強いこだわりをもって上質な商品をお客様に提供することをモットーとしています。「良いものを考え、作り、届ける」ことにより、お客様の幸せに役立ちたいとの願いからです。日本国内の販売のみならず欧米・東南アジア・中近東への輸出も積極的に展開し、世界的に高く評価されています。 同社は、高い品質を確保するため人材育成にも注力し、設立以来、AOTS(現HIDA)の受入研修制度を1回、JODC(同HIDA)の専門家派遣制度を3回利用されています。そこで今回は、専門家派遣制度を中心に、制度ご利用の経緯や今日に至るまでのご苦労などについて、取締役社長の山本昌彦様にお伺いました。[取材日:2012年11月29日]専門家派遣制度の事例(専門家受入企業)P. T. NARUMI INDONESIAまず、ボーンチャイナとはどのようなものかについて教えてください。ボーンチャイナは、英語で「骨」を意味する「ボーン(bone)」と、「磁器」を意味する「チャイナ(china)」を組み合わせた言葉で、18世紀イギリスで開発された頃、原料に牛の骨灰を使っていたことからそう呼ばれています。温かみのある乳白色、滑らかな質感と美しい透光性が特徴で、最高級の磁器と言われています。リン酸三カルシウム(牛の骨灰の成分を化学処理したもの)が優しい色合いを、特殊な釉薬が凛とした透明感を作り上げるのです。また、低温で絵柄を焼き付けるため、高温では色が褪せてしまう顔料を使用することができ、より多くの色彩を演出することが可能です。美しい絵や微細な模様が刷り込まれていることが多く、収集家や愛好家がいることでも知られます。牛の骨とは意外ですね。どのようにして作られるのでしょうか。ボーンチャイナの製造工程は、大きく3つに分かれます。一つ目は、ボーンチャイナの素地を作る工程(素地工程)です。まず、骨灰分(リン酸三カルシウム)に粘土や長石を加えた原料で、皿やカップ等の素を形成し焼成します。これにより原料が磁器へと変化します。次に、この磁器に釉薬を塗布し、さらに焼成します。これにより釉薬がガラスへと変化し、ボーンチャイナ素地が完成します。二つ目は、素地に付ける絵柄の元となる転写紙を作る工程(印刷工程)です。まず、デザイナーが作成したスケッチから、CGを使って印刷用の原版を作成します。次に、この原版を転写紙のスペースに合わせて配置します。続いて、配置の完了したCGデータを銀塩フィルムに焼き付けます。さらに、このフィルムを、印刷用スクリーンメッシュに塗布した乳剤に焼き付けて、スクリーン印刷用の版を作成します。最後に、このスクリーン印刷用の版と陶磁器用の絵具・糊を混合した印刷用ペーストや貴金属ペーストを用いて、転写紙用の台紙に絵柄を印刷し、転写紙が完成します。三つ目は、素地に転写紙の絵柄を焼き付ける工程(絵付工程)です。ボーンチャイナ素地に転写紙を貼り付け、焼成します。印刷されていた絵柄が素地に焼き付き、装飾が完了します。商品によっては、さらに金やプラチナによる装飾を行い、再度焼き付けます。 3つの工程全てを御社で行われているのでしょうか。はい、現在は全て当社で行っています。ただし、立上げ当初は「素地工程」と「絵付工程」の2つのみで、より高度な技術を要する「印刷工程」は遅れて移管しました。といっても、「素地工程」と「絵付工【P. T. NARUMI INDONESIA】本 社: インドネシア・ブカシ県(イーストジャカルタ・インダストリアルパーク)設 立: 1995年10月資 本 金: 600万ドル従 業 員: 909人(2012年11月30日現在)事業内容: ボーンチャイナ高級洋食器の製造山本社長制度利用事例

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