HIDAジャーナル 2012 AUTUMN
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11HIDAジャーナル No. 1 ● AUTUMN 2012Y.H SEIKO VIETNAM. JSC.社長 吉中 一夫様NODA VIETNAM CO., LTD.専務取締役 野田 匡直様当社は、プラスチックインジェクション金型の設計・製作を行う会社で、福井県にある従業員わずか13名の有限会社吉中精工が母体になっています。吉中精工では2007年から毎年ベトナム人技能実習生を受入れてきたのですが、第1期生の2人が来日3年目に日本語で試験が行われる二級技能検定試験(機械加工および放電加工)に合格するなど、彼らの技術を習得する能力が非常に高いことに気付きました。私は日本金型工業会・北陸部会の役員をしている関係で、以前から東南アジアへの進出を前向きに考えていたのですが、これ以降本格的に考えるようになりました。しかし、各国の状況を調べてみると、既に日系企業が多く進出している地域はどこも価格競争に晒されていることが分かったのです。せっかく多額の投資をしても、利益を上げられないのであれば意味はありません。そこで、当社の技術を正当に評価していただくことを優先し、従来の取引先が進出していないことを承知で敢えて進出先にハノイを選んだのです。この考えは的中したようで、生産開始から4ヵ月が経った今、順調に新規のお客様を獲得しています。しかも、日本では2次下請けの会社からの発注が大半を占めていたのに、1次下請けや本体の製造会社からも発注が来るようになりました。このまま行けば今年度は利益を出せそうです。ただ、これに伴い製品に求められる品質もレベルアップし、納品した製品に合格をいただけないケースも発生しています。しかし、この課題を乗り越えることで当社の技術力を1ランク上げることができるはずなので、私としては嬉しい悲鳴です。ところで、海外進出には莫大な費用が必要になります。生産設備への投資だけでも私共のような零細企業には大きな出費で、自社で工場用地を取得して建物を建設することは不可能でした。即ち、レンタル工場がなければ、当社がベトナムに進出することはできませんでしたし、このような新しい展開もなかったことでしょう。大袈裟な言い方かもしれませんが、TLAFが当社の未来を大きく変えたのです。当社は主に木型・打ち抜き型を製造している株式会社ノダ(本社・大阪)のベトナム法人で、昨年7月に設立しました。ベトナムにはその前年にお得意様の工場を間借りする形で仮進出していたのですが、TLAFのオープンと同時に工場を構えたのです。当社では、ベトナム向け商品の製造だけでなく、日本で受けた注文を含めて設計全般を担っています。打ち抜き型の業界では、大量生産されるものが中国などの海外にシフトする一方で、多品種小ロット生産用でかつ精度の高いものの需要が高まっています。これを極めて短納期でかつ低価格で実現するため、設計部門をベトナムに移管したのです。このため、朝6時から夜10時まで、3シフトで注文への対応に当たっており、常にスカイプを繋いだ状態にして日本の担当者ともリアルタイムに確認や打合せができるようにしています。また、製造のやり方にも工夫を重ねた結果、複雑な形状でなければ日本時間の午後4時(ベトナム時間で午後2時)までに受けた注文を当日中に出荷することも可能になりました。私たちにとって、「時間」も商品なのです。また、低価格を実現したもう一つの主役がこのレンタル工場というシステムです。自社で工場を建設するのに比べて投資が大幅に少なくて済みますし、会社を設立してすぐに稼働することもできました。場所によっては電気や水道を自前で用意しなければならない所もあるようですが、TLAFではその心配もありませんでした。工場が稼働するまでの準備期間が短いことも、低価格を実現するには必要な要素なのです。ただ、技術者の育成には時間がかかります。当社では事前に技術者の約半数を日本での研修に参加させて、しっかりした土台を作っておきました。そして、現在も5名の社員を日本での研修に参加させており、新たな人材を育てています。ちなみに、このうちの3名がHIDAの研修制度を利用しています。当社では「人をつくる会社」として成長・発展していこうとの想いを抱き、顧客満足度だけでなく社員の満足度の向上も目指し、良い人財を創出して社会に貢献していきたいと考えております。吉中社長野田専務取締役工場の内部打ち抜き型の製作現場アパートメント・ファクトリーの入居企業紹介 ①アパートメント・ファクトリーの入居企業紹介 ②

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