HIDAジャーナル 2012 AUTUMN
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HIDAジャーナル No. 1 ● AUTUMN 20128 HIDAには、旧AOTSの研修と旧JODCの専門家派遣の2つの制度がありますが、その両方を利用されている企業はあまり多くありません。そこで、この2つの制度をどのように活用しているのかについて、今年度両制度を利用されている企業の例をご紹介します。 株式会社大成美術印刷所は1952年創業の印刷会社で、千葉県松戸市に工場があります。シンボル商品は、ななめ小口部分に絵柄が浮出し、めくってもめくっても最後の1枚になるまで常に同じ絵柄が見える「ななめもーる」というメモ帳で、特許を保有されています。 同社は、2007年にベトナムへ進出し、「大成美術プリンティングベトナム(TAISEI BIJUTSU PRINTING (VIETNAM) CO., LTD.)」の現地従業員の育成にHIDAの人材育成制度を利用されています。今回はベトナム進出の経緯や現地従業員の人材育成についてのお考えを、総務部マネージャーの寺田博司様に伺いました。[取材日:2012年7月30日]両制度の活用事例(研修生受入企業・専門家派遣企業)株式会社大成美術印刷所まず初めに、ベトナムに進出した経緯を教えてください。印刷業界は近年の不況の中、価格低迷や原料の高騰に悩まされています。この打開策として、有力取引先がベトナムに進出したのをきっかけに、低コストと当社の高品質技術のシナジー効果を狙って2007年にベトナム・ビンズン省(ホーチミン市中心から北に43km)へ進出しました。ベトナムでの会社設立には、どのようなご苦労がありましたか。海外進出には多額の投資が必要となりますので、とにかく資金面で苦労しました。取引先の銀行をはじめ公的機関等にも相談したのですが、私どものような中小企業に莫大な金額を融資していただける金融機関は見つからず、なかなか資金調達の目処がつかなかったのです。そんな中、以前から取引があった日本政策金融公庫から、東京都の経営革新計画の承認を取得すれば融資がスムーズになるという話を聞きました。実は当社は10年程前に「ななめもーるの開発」で印刷業界初の経営革新企業に認定されたことがあるものの、「ベトナム進出」という未知の分野について経営革新計画の書類を作成するのは大変難儀しましたが、関係者からの助言もあって幸いにも承認を受けることができました。こうして、日本政策金融公庫の新事業活動促進資金制度での融資が受けられることになったのです。工場の立ち上げは、順調に進みましたか。こちらもかなり大変でした。機械の搬入や現地従業員の教育などに時間を要し、工場の本格的な稼働までに会社設立から約2年もかかったのです。また稼働後も、松戸の工場から現地へ社員を交代で派遣し、現地従業員の指導を続けましたが、彼らのレベルと当社が期待するレベルには大きな差がありました。「印刷」と言うと、カラーコピー機のような簡単な作業を想像されるかもしれませんが、実際はそのような単純な作業ではありません。印刷を始めてすぐは色が紙に写らないため、ある程度の枚数を刷って色を落ち着かせたり、印刷枚数や温度・湿度によって微妙に変化していく色調を調整しなければなりません。また、両面印刷の場合は表裏の位置、多色刷りの場合は同一印刷面の各色の位置を刷りながら合わせる必要もあります。このようにして印刷の品質を維持しているわけです。また、これらの調整は、印刷機を回しながら行いますが、印刷機は速いもので1時間に12,000回も回転しますので、調整が1分遅れただけでも200枚ものムダが出てしまいます。そこで、このようなムダを抑えるために、一連の作業には「基【株式会社大成美術印刷所】本 社: 東京都中央区湊1-9-9設 立: 1952年(昭和27年)7月資 本 金: 4,000万円従業員数: 80人(2012年7月末現在)事業内容: 広告・宣伝・促販物の企画、Web制作、DTP、印刷寺田総務部マネージャー制度利用事例

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